海外不動産協会メルマガ(2022年3月15日発行)

海外不動産協会メルマガ(2022年3月15日発行)

今月のメルマガは、『不確実性が増す世界経済、注視しておくべきポイント』理事の宮本 聡氏が発信いたします。

今年に入ってから株価が奮わない

昨年9月には31年ぶりの高値となる3万0670円まで上昇し、年末終値としては32年ぶりの高値水準である2万8791円で取引を終えた日経平均株価だったが、今年に入ってからは下げ基調が続き、3月8日の東京株式市場ではついに、心理的な節目である2万5000円を割り込んでしまった。これは、前日の米ダウ工業株30種平均が今年最大の下げ幅となったことを受けての下げ幅の拡大だった。

ウクライナ侵攻に伴うロシアへの経済制裁

この時の主な要因としては、ウクライナ侵攻に伴うロシアへの経済制裁の一環として、米欧がロシアからの原油輸入の禁止を検討していると伝わったことで、原油の供給が大幅に不足するとの懸念が台頭したことが大きい。原油の国際価格であるロンドン市場の北海ブレント原油先物は、日本時間7日に1バレル140ドル近くまで急伸する場面もあった。これは2008年7月以来、約13年8カ月ぶりの高値水準である。原油価格の高騰は、ガソリンや合成樹脂など幅広い製品の価格を押し上げることにつながり、コロナ禍のダメージからまだ脱却できていない世界経済にとっては大きな逆風となる。インフレと景気停滞が同時に進行するスタグフレーションが引き起こされ、世界経済の成長が減速するリスクは一段と高まっていると言える

2022年の世界経済見通し

2021年10-12月期の世界経済は、防疫と経済の両立が進み、物価上昇の圧力が強まるなかでも高めの成長率となっていた。2022年に入ってからは、オミクロン変異株の感染急拡大による外出行動の抑制等の影響で世界経済の拡大ペースは鈍化していたが、重症化率や死亡率の低さを踏まえ、防疫措置を緩和する動きも広がるなど、明るい兆しも見えていた。IMFが2022年1月に公表した『世界経済見通し』によれば、世界経済の成長率は、2021年の5.9%から2022年には4.4%まで減速する見込みであった。これは10月に公表された『世界経済見通し』における2022年の予測から0.5%ポイントの引き下げとなったものである。そのような状況下で起きたウクライナ危機である。2022年の世界経済見通しは再度引き下げられることになるだろう。

不確実性が増す世界経済

今後の先行きを見通すためには、ロシア・ウクライナの情勢だけではなく、いくつか注視しておくべきポイントがある。
第一に、物価上昇圧力。コロナ禍による供給網の混乱など短期的な物価上昇圧力は段階的に緩和されるものの、人手不足による人件費の上昇や資源価格の高騰はしばらく収まる気配がない。来年にかけて米欧の消費者物価は高水準を維持する可能性が高い。
第二に、米欧の金融政策の動向。インフレ圧力の強まりを受けてFRBが今年3月に利上げを開始することはほぼ確実となった。ECBも量的緩和政策の縮小を加速し、早ければ7~9月には量的緩和政策を終了する見込みだ。米国金利上昇、欧州の量的緩和政策の終了は、消費や投資の抑制要因となるほか、国際金融市場を通じて新興国の通貨安・インフレ圧力を一段と強める要因にもなる。
第三に、消費の回復力。米欧を中心に物価と金利の上昇圧力が消費の抑制要因となるが、人手不足による雇用と所得の環境改善が見込まれる中、コロナ禍で積み上がった貯蓄が積極的に消費に回ることが予想される。
第四に、グリーンやデジタルへの投資。今後、脱炭素社会への移行やデジタルトランスフォーメーションに向けて、巨額の投資が必要になる。投資は消費とともに経済の自律的な回復力の強さを左右する要素である。これらも来年にかけて世界経済の成長を押上げる要因となるだろう。

世界経済の先行きを予測する

上に挙げた4つのポイントは、それぞれが密接に関係し、影響し合っている。日々の新聞やテレビのニュースでは、ロシア・ウクライナの情勢が報じられることが多く、ついそちらにばかり目が行ってしまいがちだが、世界経済の先行きを予測する上では、幅広く視野を広げておく必要がある。物価上昇圧力、米欧の金融政策、消費の回復力、グリーンやデジタルへの投資。
この4つは、意識しておけば必ず毎日のニュースに情報が見つかるはず。
投資家としては対局を見極めて、この先の投資機会の芽を気配を見逃さないようにしておきたい。

以上