海外不動産協会メルマガ(2022年6月28日発行)

海外不動産協会メルマガ(2022年6月28日発行)

今月のメルマガは、『投資家としての心構えと注意』理事長の田中 圭介氏が発信いたします。

3つの重要なこと

6月に入り、少しずつですが海外への門戸が開き始めています。読者の皆様の中には既に海外渡航をされた方もいらっしゃることと思います。
ようやく、という想いと「まだ不安だ」という気持ちが交錯する中で、まだまだ諸手を挙げて大丈夫とは言い難いですが、それでも2年前からすると大きな進歩です。と同時に、海外不動産においても現地調査ができる、久々に自分の物件が見れる、など不動産会社も投資家も大きな期待を寄せているのは事実です。

今回のメルマガでは「投資家側が意識しておくべきこと」という意味で「注意喚起」をしたいと思います。
このような状況を見越してか徐々に不動産会社でもセミナーが増えてきており、また新しい物件紹介がされています。
それ自体は素晴らしいことであり、一方で改めて我が身を振り返るきっかけになればと考えております。
その内容が下記の3つです。
1. 投資に「絶対」はありません。
2. 投資の判断をしたのは「あなた」です。
3. 究極的には「自分で」処理してください。

1. 投資に「絶対」はありません。

これは多くの方が「頭では」わかっていることです。また不動産会社も「絶対儲かる」とは言いません。もちろん、投資する側としては「絶対儲かる」と言ってほしいという気持ちはわかりますが、いずれにせよ「絶対」なんてものはありません。

よくある話で、
「絶対に儲かると聞いた」という声が多いのですが、この中身は基本的に
■売っている人が嘘をついている
■投資家側が「勝手に絶対儲かるって思い込んでる」

この2つしかありません。

そして、不動産会社は上述した通り「絶対儲かる」とは言いません。
そんなことを言えば言質を取られ何かあった時に不利になるからです。逆を言えば「絶対儲かる」なんていう不動産会社は信用してはいけません。

要は
>「儲かる」と思い込みたい。
>「自分だけ得をした」と思い込みたい。
>「私にだけは優しい」と思い込みたい。

という「(投資家の)思い込み」です。
こういった思い込みをしやすい人は基本的に投資に向いていないので本当に気をつけてください。

投資に絶対はありません。
絶対儲かる案件なんてありません。
まずはそれくらい冷静に「自分の頭で」考えてください。

2. 投資の判断をしたのは「あなた」です。

これも1と似ていますが、契約書を確認してサインをしたのは
他ならぬ「あなた」です。

もちろん寝ている時とか勝手に実印を盗まれてサインさせられた、とか
暴力を武器に契約させられた、などは犯罪なので論外です。

そうではなく、少なくとも契約時にサインしたのはご自身で納得してサインをしたはずです。そしてその契約書に従って物事が進むのは当然です。

サインをした後で
「そんなことは聞いていなかった」
「契約書に書いてあることなんて読んでいないから知らん」
「契約書がおかしい」

は正直ダメですし、海外においては「そもそもお互いの文化・考え・言語が違う」という前提ですから、契約書が非常に重要になります。ましてや「阿吽の呼吸」なんてものは一切通じないので気をつけてください。

本来であれば、事前にデューデリをして、細かく契約書も弁護士を通して確認をしたいところです。またお互いの役割や義務、何かあった時の場合の補償等も確認して、訂正して欲しい部分があれば率直に言います。
それで双方が納得して初めて「サイン」です。

もちろん、企業(デベロッパー)対個人なので、個人投資家にそこまでさせるのか?というお声はあるかもしれませんが、逆を言えば企業は「個人だとそこまでできないでしょ?」とマウントを取っているのと同じです。結論的にはそんな企業の案件は買わない方が良いんですが、個人投資家の方も欲があるから不動産会社の言う通りにサインしてしまう。そして後で揉めてしまう、という事例は本当に多いのですが、契約書が基本ですので法律の前では「サインしたのはあなたですよね?」と言われてしまいます。ましてや海外案件になれば尚更です。

「説明不足だった!」と言われるかもしれません。
「話が違う!」と思われるかもしれません。

それでも「事前に確認をしなかったあなたが悪い」のが法律であり契約書です。厳しいことを言うようですが、残念ながら契約とはそういうものです。ですので、契約に関しては本当に慎重になってください。特に新興国での契約はチャンスもあるので気持ちはわかりますが、本当にその契約書が大丈夫かどうか、必ず確認をしてください。

3. 究極的には「自分で」処理してください。

金融商品の場合、それこそワンクリックで売買ができてしまいます。
流動性も高いので、すぐに取引ができますし、売りたい時に売ることができます。

しかし不動産はそういうわけには行きません。登記制度がある限り、「実物資産」を持っているわけですから流動性も低いし、固定資産税とか管理費もかかります。それでも投資しよう!というのは、それ以上のメリットがあるから、です。

それは、
・将来値上がりするかも
・将来自分が住むかも
・現地に避難場所を作りたい

などなど色々と考えられるでしょう。

しかし、不動産は「1人で完結できない」資産でもあります。よく「不動産投資」と気軽に言われますが、この言葉は正しいとは私は思っておらず、少なくとも海外不動産においては「不動産賃貸業」という立派な「事業」だと思っています。

不動産ですから、減価償却も税金もあります。また人に貸したり、掃除をしたり、空室が出れば賃料を決めて広告を打つ、もうこれは立派な事業であり、管理会社に投げっぱなし、というわけではないんです。

特に海外不動産の場合は「自主管理」が多いので、日本のように管理会社同士が競争して切磋琢磨しているわけではありません。
そんなマーケットで外国人のあなたが戦えるのか?と言われると正直ほとんどの方がNOと言うはずです。

ですので、
「海外不動産は購入して終わりではなく、必ず現地の誰かに委託をせざるを得ない。
委託をするということは誰かに委託するのであれば、人件費もかかるし、彼らをマネジメントして事業として運営しないといけない」ということです。

ここを理解している人が本当に少なく、日本の感覚で管理会社に丸投げで良いと考えてしまうと100%トラブルになります。もちろん、不動産会社側は物件を売るときに「管理は我々がやりますから大丈夫です!」と言うと思います。

それはそうです。彼らは「仲介」で売りたい、というのが先です。管理なんて後から考えれば良いという会社もあると思います。もちろん、販売から管理、売却まで一気通貫で実績をあげている会社も多くあります。しかし、中にはそうでもない会社もあるわけです。

それでも「決めたのはあなた」ですし、「究極的に自分で処理する」しかないということを意識してください。しかも海外の物件を。

もちろん上記のような適当な不動産会社から購入した場合は、当然ながら不動産会社側が悪いでしょう。
同情はしますが、逃げていった不動産会社を追いかけてもそれで何かが変わるわけではありません。
あくまでその物件の登記上の所有者は「あなた」であり、税金や管理費は「あなた」が払うわけですから。日本でも同じです。

それともう一点。
「現地のパートナーとは対等」です。これは本当に意識した方が良いです。
お金を払っているのはこっち(オーナー)だから「お前らがちゃんとやれ!」というスタンスだとトラブルが多いです。

これも当然理解できます。当たり前と言えば当たり前です、日本の感覚だと。
しかし、それは日本の話であって、海外では「客は客」であり、上でも下でもなく対等であり、その対等性が担保できないのであればあっさりと断られます。
ビジネスを一緒にできない、という判断をされます。

よくあるのが、「あの管理会社は最悪だ!」とか「お金払ってるのにこんな仕事もしないなんておかしい!」という声を聞きます。

もちろんそれは正しいです。至って正論であり、何も間違っていません。しかし「正論では人は動かない」ということもまた事実です。

以前、この正論をかざして管理会社を責めまくったオーナーさんがいらっしゃいました。上述した通り、全くこのオーナーさんは悪くないです。
しかし、結果的にどうなったと思いますか?

現地の管理会社が
「これ以上勘弁してください。今までのお金は返しますから、今後我々のことは忘れてください。今までありがとうございました。」
とそのオーナーさんに返信して、本当にお金と物件の鍵や契約書が返ってきました。

オーナーさんはびっくりしてこの管理会社を懐柔しようとしましたが、もう後の祭りです。
現地の管理会社のプライドを打ち砕いてしまったのです。そして、オーナーさんは他の管理会社を探されましたが、この管理会社から話は聞かされていたのか、誰も管理を受けてくれない、という状況になってしまいました。

しかもコロナ禍で空室物件です。また支払い方が分からないので、税金も払えないし、管理費も払えません。
英語も話せないので、完全に途方に暮れております。
協会とは別に私もフォローしていこうと思ったのですが、お話を聞く限り責任は誰かに言いたい方のようで、ちょっと対応できないという結論になってしまいました。
非常に文句を言われておりましたが、その言い方、付き合い方をされる限り多分誰も相手にしてくれないと思います。

改めて、繰り返します。

不動産投資は「不動産賃貸業」という「事業」です。事業であるからには、取引先がいて、取引先には人がいます。もちろん不動産会社側が適当なことを言っている例も多いでしょう。

しかし、それでもその事業オーナーは「あなた」です。残念ながら「社長」と同じです。
責任は自分に降りかかるんです。
もちろん管理会社が悪い、不動産屋が悪い、国が悪い、あいつが悪い、それは言っていいんですけど、だからと言って、それで問題が解決するわけではありません。

最終的に「自分で処理する」というのはそういう話です。
そこまで見据えた上で海外不動産とは付き合った方が良いです。と、すごく偉そうに厳しいことを言っておりますが、最近そういう方が増えてきたという印象があります。
気持ちは非常に理解できるのですが、不動産は「人」を介在するビジネスなので、そこの立ち回りも非常に重要になってきます。

だからこそ、投資家の皆さんも不動産会社の皆さんも「お互いがパートナー」です。
お互いに敬意を持って、フラットに、人として付き合って欲しいです。これは切実に思うことです。

海外に行けるようになってきて色んな方が出てきて、色んな話が飛び交っています。改めて注意をしていただければと思います。
長文失礼いたしました。
引き続き海外不動産協会をお願いいたします。

以上