海外不動産協会メルマガ(2021年10月15日発行)

海外不動産協会メルマガ(2021年10月15日発行)

今月のメルマガは、『リスクとリスク認識の違い』について、理事の島村 正人氏が発信いたします。

経済学におけるリスク概念

一般的に経済学におけるリスクの概念は、事象の変動についての「不確実性」を意味し、リスク判断に結果は組み込まれていない。リスクの概念は、経済学の中でも金融理論においてよく用いられる。投資は将来の収益が必ずしも確実といえない手段であるが故、投資におけるリスクは、分散投資を行うことによって低減をはかることになる。「かならずしもそうはならない」という不確実性であるリスク(危険)であるが、投資判断に際しては、その意思決定として、確実に得られる「効用」と、不確実性のある「期待効用」(効用の予測、効用の期待値の合計、「期待効用」)を比較して決定する。期待効用の概念は、ある2種類の効用(効用A(Ua)と効用B(Ub)があるとして、AB各効用が得られる確率をPa、Pbとすると、期待効用(EU)=Ua×Pa+Ub×Pbという算式になる。そして、投資によって得られる「期待効用」と、投資をせずにその資金を保持し続けることにより得られる確実な「効用」とを比較して投資を行うかどうかの判断をすることになり、そのときの態度、行動は人によって異なる。
リスク回避的・・・「期待効用」<「効用」
リスク中立的・・・「期待効用」=「効用」
リスク愛好的・・・「期待効用」>「効用」

確実性等価という概念

仮に100が半分の確率で獲得でき、もう半分の確率で何も獲得できないときの期待値(期待効用)は、100×50%+0×50%=50で、また、100%の確率で50を獲得できる期待値は50×100%=50で同値となるが、どっちを選ぶか、前者を選ぶ投資家はリスク愛好的、後者はリスク回避的である。また、リスクプレミアムというのは、この「不確実性を伴う資産額の期待値」から「確実性等価」を引いたものになるが、ある投資家の効用関数が効用U=√所得Mとすると、不確実性を伴う資産額の期待値は前例から50であるから、この場合の期待効用は、√100×50%+√0×50%=5となり、この期待効用から所得を求めると、先ほどの効用関数を変形することで、所得M=効用U^2=25になり、これが確実性等価である。このケースでは、期待値=50、確実性等価=25、リスクプレミアム25となる。わかりにくいかもしれないので簡単なイメージでいうと、確実な450万と50%の確率で獲得できる1千万で比較すると、期待値は確実な450万の方が50万低い。この50万がリスクプレミアム、確実な450万は確実性等価である。このリスクプレミアムは、将来の所得が不確実な状況において、確実な所得を得るために支払ってもよいと考える「保険料」や「手数料」などの金額の上限的な意味合いがある。

リスクとリスク認識の違い

経済学のおさらいが長くなったが、数学的、確率的に考えると誰が考えても明らかなものでも、誤りを犯してしまうのが人間であり、客観的な無味乾燥なデータよりも主観的で生々しい類似性の方が敏感に反応してしまう、生々しく表現されたコメントでいとも簡単に確信させられてしまう性質がある。論理より心理というつかみどころのない世界の方が重要視されるのも否定できない。
飛行機と自動車とでは飛行機の方が事故確率が低いものの車の方が安全に感じてしまう、つまり、リスクとリスクに対する認識の間には大きなギャップが実在し、実際に敏感に反応してしまうのが、リスクそのものではなくリスク認識の方であり、各リスクに対する知識や情報が不十分で統計が全くなくても、様々なリスクに対する明確なイメージを描くことができるため、それが結果として誤った判断であったと後になって後悔する。

的確な投資戦略の実施

リスク認識とは、リスクに対する思い込み、イメージであり、数学的、統計的な期待値を想定する人間の行動パターンからは想像できないことを知らないうちに行ってしまう。火災が起きるリスクが一定の確率と仮定すると、知人の家が火災にあったとした場合に、この事件を耳にする前に予見していた火災のリスクは一挙に増大し、事件が起きる前に予見していたリスク認識よりも、事件が起こった後のリスク認識の方が高くなる。

このような数学的、統計的なリスクとは無関係でイメージにすぎないリスク認識という概念による揺らぎの中で、資産運用や投資活動をすることになり、このリスク認識に日々振り回されているため、的確な投資戦略の実施が阻害される。だからこそ、勝手な思い込みや行動で誤った方向に突っ走ることがないよう、投資行動を起こす前に、堅実な投資戦略、計画を練って、投資基準、目線をブラさないよう、誘惑から揺らがないよう、確実に得られる「効用」と不確実性のある「期待効用」との比較に際し見誤らないよう、自分自身と葛藤しながら投資基準を遵守していくことが必要である。そのためには、投資対象に対し、なるべく不確実を確実に近づけるような確度のある情報収集が必要で、十分な情報が取得できないような、つまりはリスク認識に大きく振り回される要素がある投資対象には、そもそも投資すべきではないし、投資すべきでなかったと猛省することになる。

以上