海外不動産協会メルマガ(2021年9月15日発行)

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今月のメルマガは、『先進国と後進国のワクチン格差が作る投資機会』について、理事の宮本 聡氏が発信いたします。

先進国と後進国のワクチン格差が作る投資機会

日本政府は9月13日に、新型コロナウイルスワクチンの累計接種回数は約1億4431万回に達し、2回の接種を完了した人は約6,448万人で、全人口の50.9%と初めて5割を超えたと公表しました。少なくとも1回接種した人は約7,984万人で、日本の全人口の63%となります。政府は今後もワクチン接種を進め、希望するすべての人への接種を10~11月までに完了する目標を掲げています。

日本でワクチンの接種が始まったのは今年の2月からですから、半年あまりで国民の半数以上が2回接種を完了したことになります。これは諸外国と比べても驚異的なスピードだと言えるのではないでしょうか。
また、厚生労働省はワクチンの接種回数別の新規陽性者数も発表しており、9月初旬時点の全年齢で、人口10万人当たり未接種者は59.9人が陽性になったのに対し、1回接種者は20.5人、2回接種者は4.5人にとどまっているそうです。ワクチンを打つことに慎重な方や、事情により打てない方もいるので全ての人が接種すべきとは言いませんが、ワクチン接種により集団免疫の獲得に向けた一定の効果はあると言えそうです。

政府の経済社会活動の制限緩和の検討

そのような状況下で、政府は「ワクチン・検査パッケージ」という仕組みを活用することでの経済社会活動の制限緩和の検討を進めています。これは、二次感染させるリスクが低いことが接種証明や陰性証明で確認できる人を対象に、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域でも行動制限を緩めるものです。早ければ11月ごろから、感染対策の第三者認証を受けた飲食店で営業時間などの制限を緩めたり、県境をまたぐ旅行を自粛要請の対象外とする可能性があります。

日本に先駆けてワクチン接種が進んだ欧米でも、接種率が50%を超えた段階で接種証明の活用を始めた国が増えています。また、現在、海外渡航する際には、出入国時に検査や隔離が義務付けられることが通常ですが、ワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)があることで優遇措置を受けられる場合があります。例えば、フランスやドイツに入国する際には、日本のワクチンパスポートを提示することで、出発72時間前以内のPCR検査などによる陰性証明書の提示が省略できるなど、9月1日現在で約30の国と地域で、防疫措置の免除や緩和を受けられます。このような取り組みは今後も広がっていくことは間違いないでしょう。

ワクチン接種率上昇に伴う経済活動の再開

そんな、ワクチン接種率上昇に伴う経済活動の再開が、米欧諸国や日本などの先進国で進み始めている一方で、世界を見渡すと、経済力に劣る発展途上国での接種が遅れている「ワクチン格差」の問題がいっそう深刻になっています。WHO(世界保健機関)は、アフリカのほとんどの国が、9月末までに人口の少なくとも10%が接種を終えるというWHOの目標を達成できない見通しだと発表しました。IMF(国際通貨基金)は、先進国と新興国の間で広がるコロナ禍からの回復の格差を「Fault Lines(断層)」と表現しています。先進国では人口の4割近くがコロナワクチンの接種を完了する一方、新興国ではまだ1割ほどで、ベトナムに至ってはまだ3%台と、接種率の差が世界各国の「断層」を広げています。

経済社会活動再開時期の時間的なズレ

賢明な読者の皆様であればすでにお察しかもしれませんが、この世界に広がっている「断層」は、投資の世界においては「歪み」の一つだと言えます。このような時期に非常に不謹慎かもしれませんが、早い人はすでに、この「経済社会活動再開時期の時間的なズレ」という歪みを見極めて、新興国投資に関する情報収集に動き始めています。奇しくも本日9月13日に、日経平均株価が31年ぶりの高値を更新するなど、株式市場が大きな盛り上がりを見せていますが、行き先を探し求める余剰資金が次のどこに向かうのか、考えるべきタイミングではないでしょうか。

以上