海外不動産協会メルマガ(2020年9月8日発行)

海外不動産協会メルマガ(2020年9月8日発行)

今月のメルマガは、『タイ・クラビ~リゾート地の現状』として、理事長の島村 正人氏より発信します。

新型コロナウイルスによるマイナスの影響

今年は、世界中の至る場所、ありとあらゆる業界、それに係わる人々にとって、新型コロナウイルスによるマイナスの影響を受け、当初立てていた計画・予算が大幅に狂った方も多いと思う。
国内では、東京オリンピックを見越して先行開発、投資してきたホテル、旅館、宿泊事業者にとってはかなりの誤算となり、飲食業等も売上が前年同月比10%、20%程度しか実現していない店もある等、賃料支払が不能になったり、やむを得ず閉店した店舗も多く見受けられ、これが増加傾向にある。給付金等政策の恩恵も限定的であり、来年に向け先の見えない状況が継続している。

減賃要請が多々見受けられた商業・ホテル産業

国内の不動産投資業界においては、物流ファンドは比較的好調、賃料変動の少なく退去も比較的少なかったレジデンシャルは現状維持、オフィスはこれから空室率が右肩上がりになる懸念がある中、一番の打撃は、減賃要請が多々見受けられた商業、ホテルである。海外でも日本国内同様のトレンドであり、各国間の移動が困難な状況である中、観光、ホテル業界が大打撃を受けている。

ここまでは、多くの不動産投資家が感じている市況感ではあるが、実際に海外不動産投資を行っている法人・個人投資家にとっては、程度は様々であるもののマイナスの影響を受けている投資家が多いのではないだろうか。私はタイ南部のクラビという観光売上の依存度が高い地域にある、リゾートホテルや店舗が集積しているエリアにおいてホテル事業に関わっている。クラビについて、魅力を含め簡単にご紹介する。

タイ・クラビの観光産業について

クラビは、パンガー湾を挟んでプーケット島の向かいのマレー半島にあり、ビーチ周辺は石灰岩の岸壁とジャングルに囲まれ、車など陸路での移動が限られている場所が多いため、観光客の多くはロングテールボート等でアクセスしている。2006年にクラビタウンの近くにクラビ国際空港がオープンし、バンコク等からのアクセスが便利になり、ホテル開発も進み、観光客もヨーロッパ人を中心に増加してきた。日本人には直行便がないため、まだまだ知られていないエリアである。クラビでの滞在拠点の1つであるアオナンビーチは、他のビーチや島へ行くための船着き場としての役割を果たしており、周辺にはオプショナルツアーを組める観光案内所が多く集積している。クラビに点在するビーチでは、ジェットスキーなどモーター使用のマリンスポーツは禁止されているため、静かにゆっくり自然を満喫できる。

特に、アオナンビーチからほど近く、ロングテールボートで約20分のところに観光客に人気のライレイビーチ、プラナンビーチがある。カヤックやシュノーケルを楽しんだり、ビーチで心地よい波音と静けさを満喫できる。このようなビーチの他、クラビ周辺には約130もの島々が点在していて、アオナンビーチ等から船で気軽にアイランドホッピングに出かけることができる。周辺の島々で有名なのがピピ島で、クラビ本土から約40km、透明度の高い海とラグーン、石灰岩の岸壁が美しい6つの島々からなる。映画「ザ・ビーチ」のロケ地となったことで世界的に有名になった。さらに、プーケットとクラビの間、パンガー湾の島々を巡るアイランドツアーも人気で、不思議な形状の島や海の洞窟等があり、ジェームズ・ボンド島と呼ばれる島は、映画「007黄金の銃を持つ男」のロケ地として知られている。

タイ版Go Toトラベルキャンペーン

タイ政府は、新型コロナウイルス対策の非常事態宣言を9月末まで延長し(通算5度の延長)、特定国がタイを訪問することを許可する「バブル」計画はこの状況下でキャンセルされた。新型コロナウイルスの影響で、タイの2020年4~6月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比12.2%減となり、8月16日にはタイ首都バンコクでは2014年軍事クーデター以来、最大規模の反政府集会が開かれた。タイでは、観光業がGDPの約5分の1を占めていることもあり、入国禁止により海外観光客がストップしていることが業界に与える影響は大きい。

7月18日からはタイ版Go Toトラベルキャンペーンである「We Travel Together」が7月18日〜10月31日の期間でスタートしている。

キャンペーンの恩恵を受けているエリアはすくない

このキャンペーンを利用すると宿泊費の40%(最大1日3,000バーツ・約10,000円)まで政府が補助し、5泊まで利用することができ、航空運賃の40%(上限1,000バーツ・約3,300円)や食事代の一部も政府が負担するという。しかし、このようなGo Toキャンペーンの恩恵を受けているエリアとほとんど受けていないエリアとの格差は大きいのが現状で、クラビもその後者の感が否めない。
現地のホテル運営会社から定期的に受けているレポートによると、クラビのアオナンエリアのホテル、バー、レストランの約75%はまだ閉鎖されたままである。レストランは持ち帰りが可能ではあるものの、6フィートのソーシャルディスタンスに従って座席数が限られ、これらの制限と顧客不足のため、ほとんどのレストランは休業しており、マクドナルド、バーガーキング等のフランチャイズも閉鎖されている。現地で有名なマザーズスーパーマーケットやブーツ薬局も閉鎖されたままである。一部のホテルは6月に再オープンしたものの、平日の稼働率はほぼゼロ、週末で30%-40%程度の稼動に留まっているとのことである。私の関わっているホテルの営業、バーとレストランとともに閉鎖されたままで、2020年のすべての予約がキャンセルされている。人件費を相当カットし、一部の運営者のみで細々と最低限の維持管理をしているのが現状である。

先の見えないコロナ騒動の終息

コロナ騒動の終息がいつ頃なのか全く見えず、身動きが取れない中、地域、業種、個別差はあるにせよ、同じような状況下にある投資家も一定数いると推察する。高いリターンを求めたことによる予測不能な高リスクが今のタイミングにて直面し、身をもって経験しているこの現実をただ受け止めるしかないのが正直なところである。しかし、このコロナ騒動が終息した後、競合ホテルに後れを取らないようロケットスタートするための戦略・準備は前もって必要であり、そのため、運営者との密なコミュニケーションは非常に重要と考える。

(2020年9月8日発行)