海外不動産協会メルマガ(2020年3月10日発行)

海外不動産協会メルマガ(2020年3月10日発行)
不動産投資を行うに当たっては、その不動産の取り巻くマーケットを分析することが必要であり、投資の意思決定にかかる重要なプロセスの一つである。
マーケット分析は、不動産と同種の用途について、その不動産の属するマーケットにおける需要と供給の状況について分析することである。マーケット分析の本質は、需要面と供給面からの分析を行い、そのギャップを分析することで、マクロレベルからミクロレベルへと分析していく。不動産の価格や収益性は不動産の個別的要因のみで決まるものではなく、その不動産が属するマーケットの要因に左右されるため、不動産の投資にかかる意思決定には、まずは不動産の属するマーケットに目を向ける必要がある。

不動産投資の基本シリーズ~マーケット分析~

不動産を取り巻くマーケットには一連のサイクルがあり、マーケットに属する個別の不動産はその影響を大いに受ける。大きく、以下の4つに分けられる。

①拡大期

拡大期においては、使用スペースを見つけるのが難しく、賃料も上昇、取引価格も上昇を続ける。この局面ではさらに空室率が下落し、新規建築も増加する。

②供給過剰期

新規建築による供給増大が続いた結果、需要を上回る供給過剰になり、取引価格、賃料も下がり始め、空室率も上昇し始める。

③後退期

取引価格や賃料が下落する中、取引数も少ない。また新規建築の動きも見られない。この局面では空室率が上昇し、競争が激化する。

④回復期

後退期が終了すると、マーケットは安定し、そして回復に向かう。この局面では、取引価格が上昇し始め、今まで空室であったスペースも吸収され始める。この状況が続くと空室率が下落し市場均衡のレベルになる。そして拡大期につながる。

マーケット分析に当たっては、不動産の用途別に着目すべきポイントが異なる。

マックス不動産総合研究所がまとめたマーケット分析のポイントを紹介する。

a.オフィス系

需要面では、オフィス床需要の源泉となる労働者の増減に着目する。供給面では、今後供給されるオフィス計画を的確に把握する。

b.住居系

需要面では、住宅需要の源泉となる人口の増減に着目する。供給面では、今後供給される住宅計画を的確に把握する。

c.物流系

d.商業系

ショッピングセンター等の商業系不動産の市場分析は、まず、当該不動産の商圏を把握する必要がある。需要面では、当該商圏の購買力を判定、予測する。供給面では、商圏内の競合店の状況、売上げ、今後出店が計画されている店舗の数と予想売上等を分析する。

まとめ

上記のマーケット分析は豊富なデータの蓄積によってはじめて可能なものであるが、なにも国内不動産に限られることではない。海外不動産に目を向けてみると、マーケットデータについてはまだ未整備感が否めない。
しかし近年、都市部を中心に海外不動産に関する情報の増加、日本企業の分散投資ニーズの高まりから、海外不動産投資の事例が積み上がっている。
株式会社三井住友トラスト基礎研究所の「海外不動産レポート(2019年10月4日)」によると、日本企業が海外不動産に向かう背景と動機の一つに、「海外不動産に関する情報が入手しやすくなった。各国・地域にある不動産仲介・コンサルティング企業が発表する市場レポートの数が増え、英語だけでも広範囲をカバーできるようになった。
中には、日本語で読むことのできるレポートもある。関連するセミナーやイベントも増加し、海外不動産に触れる機会が多くなった。情報の増加は、海外不動産への投資に興味を持つ契機となっている。」
また、今後の見通しとして、「今後急速にその存在感が増すとは考えにくく、海外投資におけるトラックレコードを一進一退しながら積み上げていくことになろう。この中で、一時的な投資の流行や政治経済情勢の変化などを受けつつも、日本企業の間で海外不動産への投資が徐々に浸透し、国内と海外を並列で考える投資家も増え、海外不動産を色眼鏡で見る時代ではないことは浸透しつつあるようだ。」とレポートしている。大企業に限らず個人レベルでも十分なデータに基づき安全な取引が活発になされるために、当協会を含め投資家が各自でデータの蓄積に協力し、寄与できる体制づくりが求められる。

以上
2020年3月10日発行